「地域を面白くするLocal goodな人たち」　ゲスト：矢ヶ井　那津さん（北九州市立大学地域創生学群　特任教員）

3月13日読了時間: 5分

　一般社団法人ソシオファンド北九州がコーディネーターを務める北九州市民カレッジ「地域を面白くするLocal goodな人たち」。

　全5回の講座では、地域を元気に、面白くする“Local good”なゲストをお迎えして、インタビュー形式でお話をお聞きしています。

　4回目のゲストは、北九州市立大学地域創生学群　特任教員の矢ヶ井　那津さん。

　三重県出身の矢ヶ井さんは、修学旅行で訪れた北九州市の工場群と斜面に並び立つ住宅地が近接する景色に衝撃を受け、「北九州市に住むんだ！」と強く誓ったそうです。そんな思いを実現すべく北九州市立大学地域創生学群へ入学。そこから“学び”や“地域”へのかかわりが始まりました。

　とはいえ、「北九州市に住みたい！」が先行して入学したこともあり、当初は地域創生学群での学びに苦戦したそうです。高校生までの「与えられた問題を、1つの正解に向かって、一人で解いていく」という学びから、地域創生学群での地域を舞台にした実習では「自ら問いを立て、1つではない正解に向けて、みんなで考えていく」という学びへの転換。その変化に最初は対応できずに、学部を変わることを本気で考えたそうです。そんな思いも時間が経過するにつれて、その学びの楽しさ、奥深さを感じるように。在学中には、八幡東区猪倉地区での農業を通じた地域との交流や宮城県南三陸町の仮設住宅での活動に取り組んだそうです。そして、将来は「地域にかかわる仕事がしたい」とまで思うようになったそうです。

　大学卒業後は、民間企業での勤務後、熊本県内で地域おこし協力隊として、念願だった地域に関わる仕事に就くことに。理論的にも地域コミュニティについて学びたいと思い熊本大学の大学院に進学を決意。地域おこし協力隊と大学院の“二足の草鞋”生活を送ることに。

　大学院での専攻は土木。「土木」と聞くと、道路や橋をつくるといったハード整備というイメージを持ちますが、矢ヶ井さんの学んだ「土木」は、それらを基盤とした人の営みまで含むもの。そこでの学びは現在の矢ヶ井さんに大きな影響を与えたそうです。

　地域おこし協力隊として実際に地域に入って活動することで、地域に暮らす人たち自身で地域を作っていくという営みの重要性を改めて実感。その営みが「社会教育」であることを大学院の先生から教えてもらい、社会教育について学びたいと思うようになりました。その後その先生の勧めもあって「社会教育士」の称号も取得しました。

　ちなみに、矢ヶ井さん自身、まさか土木の先生から「社会教育」や「社会教育士」について教えてもらうとは思わず驚いたそうです。「北九州に住みたい！」「社会教育を学びたい！」という思いを行動に移して実現していく、そんな矢ヶ井さんの決断力・行動力を感じることができるエピソードですね。

　その後、2023年4月、地域づくりにかかわる原点となった北九州市立大学地域創生学群に特任教員として着任。主に学生の地域実習の指導を担当されています。学生として活動していた八幡東区猪倉地区の実習にも関わられているそうです。

　実習では、学生に何かを教えるのではなく、時には問いかけ、時には寄り添いながら、学生自身が地域の中で関係性を作り、問いを立て、考えることを促していく。そういった指導・支援に取り組んでいるそうです。そうすることで、学生は地域に受け入れられ、どんどん成長していくそうです。

　一方、実習を受け入れる地域の方々も変化しているそうです。学生という外部の人を受け入れることで、そこで暮らす人たちの関係性に変化が生まれる。学生たちの視点や価値観に触れることで、改めてその地域のことを見つめ直す。そんな変化は、学生として、さらに教員として長い期間、同じ地区に関わるからこそ見えてきたもの。地域の変化は、学生の変化に比べると、少しずつ、ゆっくりしたものではるものの、だからそこ着実に影響が広がっているそうです。