私たちにとっての“豊かさ”とは何だろう?
その答えのヒントを教えてくださったのは、株式会社タムタムデザイン代表取締役である田村晟一朗さんである。
今回は、田村さんにリノベーション・空き家に対する考えやタムタムデザインが経営する「アートと雑貨とナチュールワインの店tamtam7(タムタムセブン)」のことについてお聞きした。
タムタムデザインは、「成長する建築・空間」を目指すために2012年に設立した新築、リノベーションなどの建築設計や転貸事業を行っている会社である。タムタムデザインという会社名は、田村さんが実際に呼ばれていたあだ名から取ったものであり、親しみやすくとても印象に残るものである。
田村さんは、高知県出身であるが北九州に拠点を置いて事業を行っている。なぜ北九州を選んだのだろうか?それは、東京や大阪などの大都市ではなく都会過ぎず、田舎過ぎない場所を選んだそうだ。それが北九州。
しかし、現在の北九州市の人口は、減少していくばかりであり、それに比例して空き家・空きビルも増加している。増加する空き家・空きビルを資源としてひとつひとつの建物の歴史やまちの特性、場所などの物語を読み取り、その地域にあった活用方法を見出す。それが田村さんの行っているリノベーションである。
リノベーションによって、まちの資産へと生まれ変わったのは、西小倉駅から徒歩3分のところにある室町シュトラッセ。もともとは、空きビルだったが再生プロジェクトで田村さんの手により、サロン・飲食店・デザイナーなど7店舗が入居する複合施設へと再生された。
また、タムタムデザインが経営するtamtam7は、「豊かさの美術館」をコンセプトとしたワインバーである。tamtam7ではアートやアンティークを取り扱い、灯りはろうそくの火とスタンド照明だけという心地の良い環境で美術を鑑賞しつつ、食事を楽しむことができる。提供する料理の器も田村さんのこだわりがあり、北九州市の作家「松下広樹」さんのものだけを使用し、メインの絵画も地元アーティスト「KuwazonoHajime」さんの作品を展示している。また、取材にお伺いした日は、熊本の37Mata食堂(ミナマタショクドウ)の持ち込み企画で生パスタをtamtam7でふるまうというイベントが開催されており、人と人とのつながりや地域の交流を重んじている場所となっていることがよくわかる。豊かさとは、“何気ない日々”の豊かさであり、そのためには“まち”で感じる豊かさを追求すること、食事など“いつも”の時間に豊さを感じることが重要だと田村さんは言う。
今後の方針は、そのときそのときに良いな、おもしろいなと思ったことを具現化してそれを実現するために行動にすることだという。独立してから、飲食店を経営することになるとは思ってもみなかったと田村さん。その時々におもしろいと思ったことを表現してできたのがtamtam7であり、日々成長し続けていれば“今”考えている5年後10年後は常に更新されるから何をしているか自分でもわからないという。だからこそ、その都度その都度一生懸命取り組むことを目標に活動されていくそうだ。その方が5年後10年後が面白いとの事。
田村さんによってリノベーションされた建物は、人と人をつなぐ場所になり、北九州市の新しい財産としてまちを元気づけるために今日も生きている。その中の一つである室町シュトラッセ、tamtam7を訪れたことのない人は、ぜひ行ってみて田村さんの建物に込められたメッセージを、食べて、見て、肌で感じてほしい。
■お問合せ
tamtam7
北九州市小倉北区室町2-11-4 室町シュトラッセ2階
TEL: 093-967-3666
株式会社タムタムデザイン
福岡県北九州市小倉北区京町1-4-11-3F
TEL : 093-967-3115
記事:北九州市立大学 宮﨑夏美・小城麻美
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